親の家と土地、元気なうちに話しておきたいこと|家族信託・相続の基本

親の家と土地、元気なうちに話しておきたいこと|家族信託・相続の基本 手続き・住んでから

※この記事は一般的な情報です。具体的な手続きは、司法書士・税理士などの専門家に相談してください。

結論:親が元気なうちに「家と土地をどうしたいか」を話しておく

親の家や土地のことは、話しにくいテーマです。
でも、親が判断できる状態のうちに話しておかないと、あとから手続きが難しくなることがあります。

早めに話しておきたい理由

認知症などで判断が難しくなると、売却や活用が進めにくくなることがある

親が自分で判断できなくなると、家や土地の売却・活用の手続きが難しくなる場合があります。判断能力が十分でなくなった人の財産は、成年後見制度で家庭裁判所が選んだ成年後見人などが管理しますが、本人が住んでいた家を売ったり貸したりするには、家庭裁判所の許可が必要になります。

相続人が複数いると、意見がまとまりにくい

兄弟姉妹で考えが違うと、話し合いに時間がかかります。

空き家になると、管理の負担が増える

→ 関連記事:空き家をどうする?売る・貸す・活かすの比較と、まずやること

詳しい選択肢は、空き家をどうする?売る・貸す・活かすの比較と、まずやることで整理しています。

話しておきたいこと

  • 親は、家や土地を将来どうしたいと思っているか
  • 誰が管理するか
  • 売る・貸す・活かす、どの方向で考えるか
  • 必要な書類(権利証、固定資産税の通知など)の場所

話を切り出すときの考え方

家や土地の話は、「相続の話」と受け取られると、親が身構えてしまうことがあります。次のような切り口を、状況に合わせて選んでみてください。

  • 親の家の「これから」を一緒に考えたい、という言い方にする(財産の分け方の話から入らない)
  • 兄弟姉妹がいる場合は、1人だけで話を進めず、早めに情報を共有する
  • 一度で結論を出そうとせず、「親の希望を聞く」ことを最初の目標にする
  • 書類の保管場所や、固定資産税の通知など、確認しやすい事実から話す

話した内容は、メモにして家族で共有しておくと、後で認識のずれを減らせます。

家族信託という選択肢

家族信託は、親が元気なうちに、家や土地の管理を家族に任せる仕組みのひとつです(信託法にもとづき、財産を託す人と託される家族の間で契約を結ぶ方法)。ほかに、元気なうちに将来の後見人を契約で決めておく「任意後見制度」もあります。
向いている場合とそうでない場合があるので、専門家に相談して判断するのがおすすめです。

※問い合わせ後に、電話で氏名などの確認があります。

後見制度との違い:法務省の説明から

法務省の「成年後見制度について」では、法定後見制度と任意後見制度の違いが、次のように説明されています。

項目 法定後見制度 任意後見制度
利用する時期 判断能力が不十分になった後 判断能力があるうちに準備し、不十分になった後に効力を発揮
支援する人の決め方 家庭裁判所が成年後見人等を選ぶ 本人が任意後見人と、任せる事務の内容を自分で決める
手続き 家庭裁判所に後見開始などの申立て 公正証書で任意後見契約を結び、判断能力の低下後に家庭裁判所へ任意後見監督人の選任を申し立てる
監督人 必要に応じて家庭裁判所が選ぶ すべての事案で選ばれる

任意後見は、契約で定めた範囲で代理できる制度で、本人の契約を取り消すことはできないとされています。また、契約は公証人が作成する公正証書で結ぶ必要があります。

家族信託は、後見制度とは別の仕組みです。どちらが合うかは、家族の状況や、託したい財産の範囲で変わるため、この記事では優劣を示しません。専門家に、それぞれの違いと費用を比べて説明してもらいましょう。

こういう場合はどう考える?ケース別の考え方

親がまだ元気で、実家に住んでいる場合

今のうちに、家や土地の将来についての希望を聞いておく時期です。任意後見は、法務省の説明でも、判断能力があるうちに準備する制度とされています。家族信託を含め、必要かどうかは専門家に相談したうえで判断しましょう。

すでに物忘れが心配になってきた場合

判断能力が十分かどうかによって、結べる契約や使える制度が変わります。早めに、司法書士・弁護士などの専門家や、お住まいの地域の相談窓口に相談してください。自己判断で進めず、「今、どの手続きが可能か」を確認することが大切です。

親が施設に入り、実家が空き家になりそうな場合

本人の判断能力に問題がなければ、本人の意向を確認したうえで、売る・貸す・そのまま維持するのどれにするかを話し合います。空き家になった後の管理負担は、空き家をどうする?でまとめています。

兄弟姉妹で意見が分かれそうな場合

早い段階で情報を共有し、親の意向を書面に残してもらう方法があります。たとえば、法務局には自筆証書遺言書保管制度があり、遺言書1通の保管申請の手数料は3,900円(収入印紙で納付)と法務省が案内しています。遺言の内容や書き方は、専門家に相談してください。

親から土地を受け継ぎ、使い道に困っている場合

売却・活用のどちらにするかは、土地の条件で変わります。相続した土地・使っていない土地はどうする?と、土地活用は何から始める?も参考にしてください。

相続した後の手続き:相続登記の義務

親の家や土地を相続したときは、名義の変更(相続登記)が必要になります。法務省の案内では、2024年4月1日から相続登記の申請が義務になりました。

  • 相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請する必要がある
  • 正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になる
  • 施行前に始まった相続も対象で、未登記の場合は、2027年3月31日までに登記する必要がある(ただし、不動産の取得を知った日が2024年4月以降であれば、その日から3年以内)
  • 申請の義務を簡易に果たす制度として「相続人申告登記」がある(遺産分割が成立した場合の追加の義務は、この制度では果たせない)

登記の方法や期限の数え方は、事情によって異なります。管轄の法務局か、司法書士に相談してください。

空き家になった実家を売るときの税金の特例

国税庁の「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」では、一定の要件を満たす場合に、譲渡所得から最高3,000万円を控除できるとされています(2024年1月1日以後の譲渡で、相続人が3人以上の場合は2,000万円が上限)。適用は、2016年4月1日から2027年12月31日までに売却するものが対象です。

主な要件として、次のようなものが示されています。

  • 建物が1981年(昭和56年)5月31日以前に建築されたこと
  • 相続の開始の直前に、被相続人以外に住んでいた人がいないこと
  • 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
  • 売却代金が1億円以下であること
  • 売却時点で一定の耐震基準を満たすこと、または取り壊したうえで敷地を売ること
  • 相続後から売却まで、事業・貸付け・居住に使われていないこと

要件は細かく、ほかにも条件があります。使えるかどうかは、必ず税務署や税理士に確認してください。

土地の活用も一緒に考えるなら

よくある質問

Q1. 家族信託をすれば、相続の手続きは不要になりますか?

家族信託を使った場合に、相続のときの手続きがどう変わるかは、信託の内容によって異なります。この記事では一律に答えられないため、司法書士・弁護士などの専門家に確認してください。相続登記の義務など、別に必要な手続きが残る場合もあります。

Q2. 成年後見制度と任意後見制度は、どう違いますか?

法定後見は、判断能力が不十分になった後に、家庭裁判所が後見人等を選びます。任意後見は、判断能力があるうちに、本人が公正証書で契約して後見人を決めておく制度です。違いは、上の表で整理しています。

Q3. 成年後見人がいれば、親の家を自由に売れますか?

自由にはできません。裁判所の案内では、成年被後見人(本人)の居住用の不動産を処分する場合は、家庭裁判所の許可が必要とされています(本人が住んでいた家を売ったり貸したりする場合も同様です)。

Q4. 親が亡くなる前に、名義を子に変えておけますか?

生前に名義を変える方法には、贈与や売買などがありますが、税金や、他の相続人との関係に影響することがあります。この記事では、税額や有利不利を示せないため、税理士・司法書士に確認してください。住宅の購入資金の贈与については、住宅取得等資金の贈与税の非課税も参考にしてください。

Q5. 相続登記を放置するとどうなりますか?

正当な理由なく期限内に申請しないと、10万円以下の過料の対象になる場合があると、法務省が案内しています。放置すると、のちの相続人が増えて手続きが複雑になることもあるため、早めに確認しましょう。

親と話す前のチェックリスト

  • ☐ 親の家と土地の所在地、名義人(登記簿上の名義)を確認した
  • ☐ 固定資産税の通知書や権利関係の書類の保管場所を把握した
  • ☐ 兄弟姉妹に、話し合いをしたいことを伝えた
  • ☐ 親の希望(住み続ける・売る・貸す・誰が管理するか)を聞く時間を作った
  • ☐ 家族信託・任意後見・遺言などについて、専門家に相談する予定を立てた
  • ☐ 空き家になった場合の管理方法を、家族で話した
  • ☐ 話した内容を、メモにして共有した

まとめ

  • 親が元気なうちに、家と土地の将来を話しておく
  • 判断が難しくなると、手続きが進めにくくなることがある
  • 家族信託などの方法は、専門家に相談して判断する
  • 任意後見は、判断能力があるうちに準備する制度。法定後見とは仕組みが違う
  • 相続登記は、2024年4月から申請が義務になっている
  • 空き家の売却には税金の特例があるが、要件は細かい。使えるか専門家に確認する

次の一歩

  1. 親の家と土地の名義、書類の場所を確認する
  2. 親の希望を聞く時間を作り、兄弟姉妹と共有する
  3. 家族信託・任意後見・遺言などについて、司法書士や弁護士に相談する
  4. 売る・貸す・活かす、の比較を見る(空き家をどうする?、土地活用は何から始める?)

出典(2026年10月21日確認)

制度や税の取扱いは変わることがあります。手続きの前に、法務局・税務署・専門家に最新の内容を確認してください。

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